今回の特集記事制作にあたり、函館市教育委員会の阿部千春参事にお忙しい中ご協力いただき、
お話を伺うことができました。

阿部千春(あべ・ちはる)
平成16年の函館市との合併を機に、国宝指定に向けての取り組みをされた中心人物。
以前は埋蔵文化財センターに勤務していた、いわば縄文のスペシャリスト。
私あんきもは前にも阿部参事のお話を聞いたことがありますが、縄文について非常にわかりやすく、なおかつ興味をそそられるように、教えてくださる方です。
今回の取材でも、「縄文初心者」の私たちにもわかるよう、やさしい言葉で説明してくださいました。
一方で、縄文時代の文化は、今こそ見直されるべき時期だと、情熱を内に秘めていらっしゃるのが垣間見えました。
◆中空土偶のすごいところ◆
中空土偶「芽空」(かっくう。国宝に指定された中空土偶の愛称)のいったいどんなところが
国宝に指定されるほどの価値があるのか?
阿部参事に率直に聞いたところ、大きく分けて3点にあると教えてくれた。
まず、大きさ。中空土偶としては国内でも最大の大きさ(高さ41.5センチメートル、
幅20.1センチメートル)であり、頭の飾りと両腕が失われているほかはほぼ完全な形である。
そして文様構成。三角、ひし形、丸など様々な細かな文様が組み合わされていて、
当時の芸術性の高さを伺い知ることができる。
最後に技巧。中空、つまり中が空洞の土偶というのは、作るのが難しい。
土偶の内外の空気の温度差が開きすぎて割れてしまうことがある。
また、頭部までひとつづきに成形しようとすると頭の重みでうつむいた土偶になってしまうため、
頭部は別に作り、あとから身体の部分につけて焼かなくてはいけない
(首飾りのように見える部分は、接着した首の補強の意味も兼ねていると考えられている)。
「芽空」はうすづくりであるが、薄ければ薄いほど作るのが難しいのは言うまでもない。
ちなみに、阿部参事はご自身で中空土偶づくりに挑戦したことがあり、
その難しさを身をもって感じられたのだそうだ。
この土偶の美しさ、外見的評価が縄文時代の「精神文化」を表すものとして極めて価値が高く
重要であることから、平成19年6月8日に北海道では初の国宝指定となったものだ。

「実は、発見当初より『国宝級』だとは言われていたのです」
「さまざまな偶然が重なって、素晴らしい人との出会いがあって、国宝に指定された、今があります」
と、熱く語る阿部参事。中空土偶をずっと見守ってきただけに、そのお話にも力が入る。
それを、学校の教科書で見た土偶に似ていると気づいた家族がいた。
「この国宝指定を自分の最後の仕事にしたい」と、「芽空」に惚れこんだ人がいた。
現代のわたしたちに伝えるべきメッセージを、縄文から持ってきたのかもしれない。
土器や石器など生活に必要なものや実用的な道具をつくるだけでなく、
このような難しい技術を必要とする土偶をつくっていたということは、
当時より高い芸術性と文化が育まれていたことを示すものにほかならない。
南茅部地域の海と山に囲まれた恵まれた自然環境も、縄文文化を発展させる上で、
おおいに影響していたのだと思われる。
国宝中空土偶は現在は市立函館博物館で管理されているが、平成23年オープン予定の
「縄文文化センター」では常時展示し、たくさんの方に見ていただけるようになるとのことだ。
執筆/annkimo
加筆・撮影/younashi
編集/kitora
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